ワインや清涼飲料水に含まれる酸化防止剤や保存料にはどのような役割があるのでしょうか。そして、それらは飲料の味や風味、皆さんの健康にどのような影響を与えるのでしょうか? また、それらに代わる安全性の高い添加物として注目されている、飲料用殺菌料「ベルコリン」とは?ここでは、飲料の品質を維持するための各添加物について詳しくご紹介していきます。
CONTENTS
1. ワインに使用される酸化防止剤の役割とは?
・ ワインに使用される酸化防止剤「亜硫酸塩」
・ 「亜硫酸塩」が飲料や人体にもたらす影響
2. 酸化防止剤と保存料の違い
・ ワインに使用される保存料「ソルビン酸」
・ 清涼飲料水に使用される保存料「安息香酸ナトリウム」
3. 酸化防止剤や保存料に代わる安全性の高い飲料殺菌料「ベルコリン」
・ 高い有効性
・ ベルコリンのメリット
4. ベルコリンの投与技術
・ 簡素かつ確かな技術
・ ベルコリンDT Motionの特徴
・ ベルコリンDT Motionの利点
5. まとめ
酸化防止剤は食品添加剤の一種で、食品が酸化するによる品質の低下を抑制する抗酸化物質です。食品成分に代わって、酸化防止剤自体が酸化されることで、食品が酸化するのを防ぎます。酸化防止剤は、食品や飲料に限らず化粧品、ボディーソープ、合成樹脂などにも使用され、同様の役割を果たしています。
ほとんどのワインに酸化防止剤として使用されているのが、亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム)です。ブドウを潰す際の果汁の酸化防止や、出来上がったワインの酸化を抑制してワインの寿命を延ばす役割をしています。二酸化硫黄を含む亜硫酸塩は、アルコールが酸化した際に発生するアセトアルデヒドと結合するため、酸化してしまった状態からでも品質を改善する作用があるのだそうです。また、亜硫酸塩には殺菌効果もあり、雑菌の増殖を防ぐことができます。
亜硫酸塩は、ワインの中に溶けた時点で、添加量の約半分が糖分などの他成分と結合し無害な状態になります。そのため、使用限度内であれば人体への悪影響はないとされています。しかし、ごく稀に、少量の亜硫酸塩でもアレルギー反応が出てしまうケースがあるそうで、それが「頭痛を引き起こす」など言われてしまう原因なのかもしれません。また、亜硫酸塩はドライフルーツなどの漂白剤としてもわれており、使用量によっては、その脱色効果により、果実の味わいやワインの色に影響を及ぼす可能性も考えられます。
酸化防止剤は食品衛生法によって使用限度が定められており、限度量以下であれば人体への悪影響はないとされていますが、過剰摂取は健康への悪影響が懸念されているため、消費者は、厚生労働省が定める、健康への悪影響がないとされる「一日摂取許容量(ADI)※1」などを参考に、過剰摂取にならないよう注意が必要です。
ワインに対する使用限度:0.35g/kg
ADI:0-0.7mg/kg 体重/日
※1 ADIは、1日当たり、体重1kg当たりの物質量(mg/kg 体重/日)で表されます。
その文字通り、酸化防止剤は「酸化」を防ぐことで、食品や飲料の品質を維持しますが、酸化防止剤と併用されることも多い保存料にはどのような役割があるのでしょうか?
保存料は、微生物の発生を防ぎ、品質の低下や腐敗、食中毒のリスクを抑える目的として多くの飲料や食品に使用されています。殺菌作用はないため、菌が増殖した後で使用しても効果は見込めません。
殺菌作用はないため、菌が増殖した後で使用しても効果は見込めないとされています。
保存料も酸化防止剤同様、食品衛生法によって使用限度が定められており、限度量以下であれば人体への悪影響はないとされています。しかし、保存料は様々な食品や飲料に含まれているため、その過剰摂取は健康への悪影響が懸念されています。消費者は、厚生労働省が設定している、健康への悪影響がないとされる「一日摂取許容量(ADI)」などを参考に、過剰摂取にならないよう注意する必要があります。
ワインの保存料として主に使用されているのは、脂肪酸の一種で、幅広い微生物に抗菌性を発揮するソルビン酸です。カビや酵母の発生や増殖を抑える効果があり、糖分の残っている甘口ワインの酵母が活性化し、再発酵するのを防止する目的で添加されています。ソルビン酸は、ワインの他、ソーセージやハムなどの加工品、ちくわやはんぺんなどの練り物、漬物、チーズ、ジャムなどにも使用され、世界で最も使用されている保存料です。体内で代謝され、二酸化炭素と水にまで分解されると考えられています。
ワインに対する使用限度:0.2g/kg
ADI:25㎎/kg 体重/日
清涼飲料の保存剤として使用されているのは、栄養ドリンクや炭酸飲料の保存料としてよく知られている安息香酸ナトリウムです。カビや酵母に効果があり、酸性が強い食品に、より高い効果を発揮すると言われています。米国などでは比較的幅広い食品への使用が許可されていますが、日本での使用は、キャビア、マーガリン、清涼飲料水、シロップ、醤油、菓子の製造に用いる果汁・果実ペーストに限られています。
2006年に、英国などで、安息香酸ナトリウムとアスコルビン酸(ビタミンC)が、一定の条件下で反応し、ベンゼンが生成されること、そして市販製品中にベンゼンが低濃度で検出されたことが公表されました。ベンゼンは、環境中に広く存在する化学物質ですが、人に対して発がん性があると分類されていることから、安息香酸ナトリウムを含む清涼飲料水とビタミンCをあわせて摂取する際は注意が必要かもしれません。
清涼飲料水に対する使用限度:0.6g/kg
ADI:0₋5mg/kg 体重/日
ランクセスの飲料殺菌料「ベルコリン®(Velcorin®)」の製品名で販売される、二炭酸ジメチル(DMDC)は、殺菌作用のある保存料として、アメリカやヨーロッパで、ワインやビール、清涼飲料水、近年海外の若者の間でブームとなっているハードセルツァーなどに使用されています。日本では、2020年に初めて食品衛生法施行規則に基づく食品添加物として厚生労働省により認可され、現在、ワインと清涼飲料水への使用が可能になっています。
「ベルコリン」は、飲料を缶や瓶に充てんする際に添加され、添加直後からその殺菌効果を発揮し、飲料中の酵母・真菌・細菌などの腐敗微生物を不活性化します。添加後数時間で、極少量のメタノールと二酸化炭素(いずれも果汁飲料や果汁含有飲料に含まれている天然成分)に加水分解されるので、飲料が消費者の手元に届く時には殺菌料が残留しません。そのため、「ベルコリン」は飲料の香り、風味、色調に影響を与えません。これは特に、同じ抗菌目的で使用される安息香酸塩のような保存料に比べて大きな利点です。食品中の栄養成分とその相互作用においても、安全性への懸念がないことが認められています。
また、ベルコリンには抗酸化機能はないものの、亜硫酸塩の殺菌機能をベルコリンで代替することができるため、亜硫酸塩の使用を大幅に減らすことができます。スパークリングワインなど、特定の条件下においては、すべての亜硫酸塩をベルコリンに置き換えることも可能です。
ワインに対する使用限度:200 mg/kg
清涼飲料水に対する使用限度:250 mg/kg
厚生労働省が発表した保存料の有効性の比較試験の結果から、二炭酸ジメチル(DMDC)の有効性及び優位性が認められています。
酵母菌を20,000 cfu/mLを播種したアップルジュースに、二炭酸ジメチル(DMDC)、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸を添加し、26℃で24時間培養した後、検体を10、100、1000倍希釈して、それぞれの酵母菌数をプレート法により求めた。その結果、安息香酸ナトリウムとソルビン酸カリウムでは共に生菌が検出されたが、二炭酸ジメチル(DMDC)では検出されなかった。
二炭酸ジメチル(DMDC)と保存料との有効性の比較
+:300cfu以上、 数値:肉眼的なcfu、 -:肉眼的に酵母菌を認めず
(引用:厚生労働省「二炭酸ジメチルの食品添加物の指定に関する部会報告書」)
ベルコリンと、最先端のベルコリン投与ユニットを組み合わせることで、効果的な飲料の低温殺菌ソリューションだけでなく、製造面も含めた総合的なソリューションを提供します。
新しいベルコリン DT Motionモデルは、ベルコリン DT Touchシリーズの安心の装置設計を基にしており、最新ソフトウェアやインダストリー4.0に完全に対応するユーザーインターフェース、安全で簡便なオペレーションのための高度な自動化といった、いくつかの新機能を実装しています。
ここでは、ワインや清涼飲料水に使用される酸化防止剤、保存料、そして、ランクセスの飲料用殺菌料「ベルコリン」についてご紹介しました。
ワインの保存料、酸化防止剤は飲料の品質を維持し、長期保存を可能にするための重要な役割を果たしています。2020年に日本での使用が認可された「ベルコリン」は、その安全性と有効性の高さから注目されている保存料のひとつです。これから、飲料の食品表示ラベルで「二炭酸ジメチル(DMDC)」を目にすることが増えるかもしれませんね。
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