サーキュラーエコノミー(循環経済)
持続可能で資源効率の高い、カーボンニュートラルな経済に向けた社会の変革と取り組み
循環経済(サーキュラーエコノミー)とは、大量生産、大量消費、大量廃棄の従来のリニア(直線)型経済システムに代わるサーキュラー(循環)型の経済システムで、資源消費と廃棄の最小化、製品の価値の最大化により持続可能な経済活動を目指す発展的な経済システムです。
CONTENTS
1. サーキュラーエコノミーとは?
2. 化学産業におけるサーキュラーエコノミーへの取り組み
3.循環型のプロセスとケミカルリサイクル
4. ランクセスでの取り組みとイニシアチブ
1. サーキュラーエコノミーとは?
サーキュラーエコノミーは、持続可能な社会の実現に向けて2015年から欧州(EU)で掲げられている、経済活動に関する発展的な概念で、日本語では循環経済と呼ばれています。その名の通り、これまでの「調達-製造-消費-廃棄」のリニア(直線)型の経済システムに代わる、サーキュラー(循環)型の経済システムを意味しています。
リニア型の経済システムでは廃棄されていた、製品、素材、原材料などを「資源」として捉え、リユース(再利用)やリサイクル(再生利用)、リファービッシュ(再整備)などにより、その価値を可能な限り長く維持し、廃棄物の発生を最小限化します。サーキュラーエコノミーは、持続可能で低炭素かつ資源効率的な経済実現のためにも欠かせない要素となっています。
2. 化学産業におけるサーキュラーエコノミーへの取り組み
化学産業は、何十年もの間、原材料やエネルギーの使用に伴うコストの改善、環境や気候への影響など、複雑な生産システムの最適化に取り組んできました。そこから得た様々な革新的技術により、資源効率や気候への影響は改善され、相互に作用する「Verbund(フェアブンド:統合、ネットワークの意味)」構造が構築されました。
化学産業は、現在でも化石資源に大きく依存しています。一部の循環型アプローチへの切り替えはそれほど難しくないかもしれませんが、真の循環経済を構築することは、これまでのパラダイムを大きく変化させることであり、関係するすべてのステークホルダーの多大なる努力が必要です。
循環型の世界では、産業はこれまでの「調達-製造-消費-廃棄」のリニア(直線)型の経済システムから循環型に移行する必要があります。化学産業は長いバリューチェーンの中間に位置しています。今日では、石油・ガス産業、鉱業、そして農業分野からも一部資源を調達しています。それらの原材料は基礎化学品と中間体に変換され、その後、添加剤や素材などの機能性化学品になります。OEMメーカーは、この化学品を使用して自社製品を製造し、その製品は、役割を果たしたのち、最終的には廃棄物になります。
ランクセスは、化学分野のリーディングカンパニーとして、サーキュラーエコノミー(循環経済)を単なるリサイクルではなく、持続可能でカーボンニュートラルな社会に向けて、価値創造システム全体を変革することだと捉えています。
3. 循環型のプロセスとケミカルリサイル
再利用と修理
消費財や溶剤などの化学薬品も再利用が可能です。食品包装の再利用のように、現在多くの新しいビジネスモデルが開発されています。
メカニカルリサイクル(物理的再生法)
材料の化学構造を変えずに機械的に分解するメカニカルリサイクルは、長年に渡り用いられています。回収、分離、粉砕、溶融、選別、洗浄、そしてろ過もそれに含まれます。しかし、すべてのケースに適しているわけではなく、主に酸化による材料の劣化が課題となっています。さらに、清潔で選別されたプラスチックでなければ、適用できないことも課題です。
ケミカルリサイクル(化学的再生法)
ケミカルリサイクルは、サーキュラーエコノミー(循環経済)において大きな役割を果たすことが期待されています。ケミカルリサイクルの一般的な目的は、モノマーまたは石油化学原料を採取し、分別されていない廃棄物を化学産業にとって価値あるものに転換して再利用することです。さまざまな方法で、材料は化学的な構成要素に分解されます。方法は次のとおりです。
- 解重合:高分子を、その構成要素であるモノマーへ変換すること。モノマーとしての機能は維持されます。
- 熱分解:無酸素で加熱する化学分解プロセスです。従来、可燃ごみの処理などに行われてきた焼却とは異なり、酸化反応によるダイオキシン、煙、煤などを発生させません。熱分解により、ポリマーはモノマーに分割され、多くの場合、基礎化学物質に戻されます。分別されていない汚染された廃棄物に対して有効です。出力された材料は、再び化学品のバリューチェーンの原料として使用できます。
- ガス化:熱分解プロセスの一種で、一般的には高温で処理され、窒素や水蒸気などを注入することで様々な反応を促進させることもできます。分類されていない高度に汚染された廃棄物にも適しています。廃棄物などの有機材料は、ガス状の成分(一酸化炭素・水素・メタンなど)に変換されます。ガス化により、化学物質をゼロから生産することができます。
ケミカルリサイクルでは、メカニカルリサイクルでは困難な、複雑すぎる、あるいは激しく汚染された廃棄物も処理することができます。
4. ランクセスでの取り組みとイニシアチブ
ランクセスは、「クライメイト・ニュートラル(気候中立)2040」の目標を掲げ、カーボンニュートラルで資源効率の高い、持続可能な社会の実現に向けた、価値創造システムの構築を積極的に支援しています。ランクセスは、完全なライフサイクルアプローチを含むサーキュラーエコノミー(循環経済)が、欧州の持続可能な低炭素経済への移行を実現させるための重要な要素であるとともに、パリ協定と国連の持続可能な開発目標の達成にも貢献すると考えています。
さらに、ランクセスはプラスチックの環境への流出防止にも取り組んでいます。これが、Operation Clean Sweep(OCS)に署名した理由です。
また、ランクセスは欧州の業界団体であるPlasticsEurope(プラスチックス・ヨーロッパ) の一員として、自主的な取り組みである「Plastics 2030(プラスチックス2030)」にも署名しています。
Plastics 2030(プラスチックス2030)の目的
- 業界内外における取り組みを強化し、プラスチックの環境への流出を防止する
- 製品のライフサイクル全体においてイノベーションを促進し、資源効率を向上させる
- プラスチック包装の循環性を向上させ、2040年にEU全体ですべてのプラスチック包装のリユース(再利用)、リサイクル、回収を100%にする(2030年までに60%)
その他の取り組みとイニシアチブ
ケミカルリサイクル(化学的再生法)
ポリスチレンループ
現在、ランクセスはパートナー企業と協力して、ケミカルリサイクリングの革新的な方法を研究しています。その一つがポリスチレン・ループ・プロジェクトです。革新的なプロセスにより、使用済みの難燃性ポリスチレン系断熱パネルを完全にリサイクルすることが可能になります。ポリマーに含まれるスチレンだけではなく、難燃剤に含まれる臭素も回収されます。再生されたポリマーの品質は元の材料と同等です。また、回収された臭素は持続可能な難燃剤の生産に再利用することができます。
メカニカルリサイクル(物理的再生法)
再生ポリカーボネートを使用した繊維強化熱可塑性複合材料
ランクセスグループ傘下のボンドラミネーツ社(Bond-Laminates)は現在、テペックス®(Tepex®)ブランドの連続繊維で強化された熱可塑性複合材料の新製品を開発しています。この新しい半製品のマトリクスの半分は、再利用可能なポリカーボネート製ウォーターボトルのリサイクル品で構成されています。曲げ強度と剛性は、少なくともすでに市場に出ている新製品と同等です。
ポカン®(Pocan ®) ECOグレード
ポリエステルブレンドのポカン®ECOシリーズには、特別にリサイクルされた使用済みポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂が含まれています。これにより、白物家電なども、新品に近い特性と品質を備えた製品を造ることができます。
廃ガラスからの再生繊維を使用したポリアミド製品デュレタン®(Durethan®)
Ecoランクセスは、廃ガラスから生成された再生繊維を、それぞれ30%、35%、60%ブレンドした3つの新しいポリアミド6コンパウンドを発売しました。独立した検査会社Ecocycle(エコサイクル)社は、物質収支法を用いて、各コンパウンドのリサイクル材料の量と、使用した廃ガラスの長期的な使用を調査し、ISO 14021:2016に準拠したエコループ証明書を発行しました。ガラスは、ガラス繊維の製造で残った廃棄物(ポストインダストリー・リサイクル)を原料として使用しています。
BDI(ドイツ産業連盟)サーキュラーエコノミーイニシアチブ
ランクセスは、化学業界で数少ないBDIサーキュラーエコノミーイニシアチブの創設メンバーです。このイニシアチブの目的は、技術的な可能性を特定し、サーキュラーエコノミー(循環経済)を機能させるために必要な枠組み条件を定義することです。このイニシアチブは、産業界と行政、科学と社会の間の意見交換の場となり、リサイクル原材料市場を促進し、廃棄物削減につながる手段を共同で開発することを目指しています。
ISCC(国際持続可能性カーボン認証)イニシアチブ
ランクセスは、国際的なサステナビリティとカーボン認証のイニシアチブに参加しています。
ISCCは、140以上のメンバーで構成される協会が運営するマルチステークホルダーイニシアチブです。この協会の目的は、原材料からOEMやブランド所有者にいたるまでのバリューチェーン全体をカバーする、持続可能性基準のグローバル展開とさらなる開発です。ランクセスのクレフェルト・ユルディンゲン(ドイツ)拠点でのポリマーの配合と、アントワープ(ベルギー)にある製造拠点でのガラス繊維の生産は、すでにISCCの認証を受けています。ランクセスは、持続可能なカーボンニュートラルとサーキュラーエコノミー(循環経済)実現のため、ISCC制度のさらなる開発に積極的に参加します。
WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)イニシアティブ
WBCSD Factor10イニシアティブ
サーキュラーエコノミー(循環経済)を実現するには、材料の環境効率を10倍以上に向上させる必要があります。この洞察により、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)の「Factor10」イニシアチブが開始されました。15以上の国と業界から30以上の企業が参加しており、ランクセスはその一員です。Factor10は、循環型への転換を可能にするメトリック、ツール、および新しい洞察を作り出します。